どうも、にこいちです。前回は「企画=誰に・何を・どう伝えるか」をAIで素早く形にする方法を学びました。今回はその企画を映像の設計図=絵コンテに落とし込み、短尺広告(6/15/30秒)で成果が出る“3パート構成(導入・訴求・CTA)”を、誰が見ても齟齬なく実行できるレベルまで“見える化”します。
AIが映像生成を当たり前にした今、価値の源泉は構造の理解と設計力にあります。この記事では、
- 30秒=8カットの基本設計と1秒目のフックの作り方
- ベネフィットとRTB(根拠)を映像内で可視化するコツ
- Chat→画像生成→動画生成へつながるプロンプト雛形
を、コピペで使えるテンプレート付きで解説。読了後すぐに「台本→絵コンテ→生成素材」のラインを回せる状態を目指します。
はじめに:なぜ今、広告の「型」を学ぶ必要があるのか?
前回の「企画づくり」では、AIを活用して動画制作の出発点となるアイデアを形にする方法について学びました。今回はそこから一歩踏み込み、特に広告動画において、なぜ古くから伝わる「型」、すなわち「構造」を理解することが重要なのかを解説していきます。
AIが驚異的なスピードで進化し、誰もがクリエイターになれる時代。だからこそ、この「構造」の知識が、あなたの作る動画を凡庸な作品から一線を画すものへと昇華させる鍵となります。
AIによる動画制作のコモディティ化
数年前まで、質の高い動画を制作することは、一部の専門家だけが持つスキルでした。高価な撮影機材、複雑な編集ソフトの操作、そして長年の経験に基づく専門知識。これらがなければ、人の目を引く動画を作ることは困難でした。
しかし、AIの登場がその常識を根底から覆しました。
今や、テキストプロンプトを一つ入力するだけで、AIが目を見張るような映像を生成してくれます。この「技術の民主化」は、創造のハードルを劇的に下げ、誰もが映像表現者になれる可能性を秘めています。
一方で、これは「動画を作れる」というスキルのコモディティ化、つまり日用品のように当たり前で、特別な価値を持たなくなる現象も引き起こしています。単にAIツールを操作して映像を出力するだけでは、その他大勢の作品の中に埋もれてしまう危険性が高まっているのです。
「企画力」と「構造の理解」がクリエイターの価値になる
では、誰もが動画を作れる時代に、その他大勢から頭一つ抜け出すためには何が必要なのでしょうか。
その答えこそが、本稿のテーマである「企画力」と「構造の理解」です。
AIは非常に優秀な「実行者」ですが、何を目指して、どのような順序で、誰の心を動かすために映像を作るのかという「設計図」を与えるのは、私たち人間のクリエイターの役割です。特に、視聴者に商品やサービスの魅力を伝え、最終的に行動を促すことを目的とする広告動画において、この「設計図」の質が成果を直接左右します。
広告における「型」や「構造」とは、決して創造性を縛るルールではありません。それは、人間心理に基づいて「どうすればメッセージが伝わりやすいか」「どうすれば人の感情が動くか」を、先人たちが何十年もかけて探求し、体系化した知恵の結晶です。
この普遍的な構造を理解し、使いこなすことで、初めてAIという最新鋭の実行者を「最高の相棒」として真価を発揮させることができます。本章以降で、その強力な「型」である「3パート構成」を学び、あなたの企画力を飛躍させていきましょう。
ウェブ広告の成果を最大化する「3パート構成」完全ガイド
AIという強力な実行者を手に入れた私たちが次に学ぶべきは、その力を最大限に引き出すための「設計図」です。ウェブ広告、特に15秒から30秒という短尺動画の世界では、成果を出すための確立されたフレームワークが存在します。それが、本章で徹底解説する「3パート構成」です。
「3パート構成」とは?:導入・訴求・行動喚起の流れ
「3パート構成」は、視聴者の心理的なプロセスに沿って、メッセージを最も効率的に伝えるためのシンプルな構造です。以下の3つのパートで構成されています。
- パート1:導入 (Introduction) 最初の数秒で視聴者の注意を引きつけ、「これは自分に関係のある話だ」と感じさせる(自分ゴト化させる)パートです。インパクトのある映像や、共感を呼ぶ「問題提起」が主な役割となります。
- パート2:訴求 (Appeal) 導入で提示した問題への解決策として、商品やサービスがもたらす具体的な魅力(ベネフィット)を提示するパートです。視聴者の「欲しい」という感情を喚起する、広告の核となる部分です。
- パート3:行動喚起 (Call to Action / CTA) 商品への興味・関心が高まった視聴者に対して、次に取ってほしい具体的な行動を明確に促すパートです。「購入」「登録」「検索」といったゴールへ確実に導くための締めくくりです。
この「導入 → 訴求 → 行動喚起」という流れは、人間が何かを認知し、興味を持ち、行動に移すまでの自然な思考の流れを汲んでおり、だからこそ強力な効果を発揮します。
なぜこの構成が短尺ウェブ広告に有効なのか
では、なぜこの構成が、特にTikTokやYouTubeショート、Instagramリールといった短尺のウェブ広告でこれほどまでに重要視されるのでしょうか。理由は3つあります。
超短時間での「注意」の獲得に対応できるから
現代は情報過多の時代であり、視聴者は少しでも「つまらない」「自分に関係ない」と感じれば、瞬時に次の動画へスワイプしてしまいます。この過酷な視聴環境で生き残るには、冒頭でいかに強いフックをかけられるかが全てです。「3パート構成」の「導入」は、まさにこの最初の数秒の戦いに勝つために最適化されています。
メッセージが直感的で分かりやすいから
15秒という短い尺では、「起承転結」のような複雑な物語を伝える時間はありません。視聴者が考えなくても直感的にメッセージを理解できる、シンプルで直線的な構造が求められます。「問題提起 → 解決策の提示 → 次の行動」という流れは、誰にとっても明快で、記憶に残りやすいのです。
広告の「成果」に直結するから
ウェブ広告の多くは、ブランド認知の向上だけでなく、クリックや購入といった具体的な成果(コンバージョン)を目的としています。構成の最後に「行動喚起(CTA)」が明確に組み込まれていることで、視聴者の感情の高まりを実際の行動へと繋げやすく、広告の投資対効果を最大化することができます。
古典的な「AIDAモデル」との関係性
この「3パート構成」は、実は全く新しい発明ではありません。これは、100年以上も前から使われているマーケティングの古典的フレームワーク「AIDA(アイダ)モデル」を、現代の短尺動画広告に最適化させたものと言えます。
- Attention(注意)
- Interest(興味・関心)
- Desire(欲求)
- Action(行動)
このAIDAモデルと3パート構成を照らし合わせると、以下のようになります。
- パート1:導入 → Attention (注意) と Interest (興味) の喚起
- パート2:訴求 → Interest (興味) を深め、Desire (欲求) を創出
- パート3:行動喚起 → Action (行動) の促進
つまり、私たちが学んでいる「3パート構成」は、長年の歴史によって証明された人間心理の原則に基づいた、極めて実践的なフレームワークなのです。この普遍的な「型」を身につけることで、あなたのAI動画は単なる映像作品ではなく、目的を達成するための「効果的な広告」へと進化します。
パート1:導入 ― 最初の3秒で視聴者を「自分ゴト化」させる技術
広告の3パート構成において、最初の「導入」パートは動画全体の運命を決定づける、最も重要なセクションです。視聴者はこのわずか数秒で、あなたの動画を「視聴する価値があるか」を無慈悲に判断します。
このパートの目的は、①インパクトのある映像で視聴者を釘付けにし、②共感できる問題提起で「これは自分の話だ」と思わせる(自分ゴト化させる)こと。この2つの要素を掛け合わせることで、視聴者の心を一瞬で掴むことが可能になります。
視聴者を釘付けにする「インパクト映像」の設計
メッセージを伝える前に、まず視聴者の指を止めさせなければ話になりません。そのために不可欠なのが、理屈抜きの「映像的な驚き」、すなわちインパクトです。
スワイプさせないための冒頭の重要性
TikTokやYouTubeショートなどのプラットフォームは、いわば「情報の洪水」です。視聴者はその中を指一本で高速に移動しながら、膨大なコンテンツを消費しています。この残酷とも言える視聴環境では、「少し退屈そう」「よくある感じだな」と思われた瞬間に、あなたの動画はスワイプされ、二度と見られることはありません。 動画冒頭の1〜3秒は、雑誌の表紙や本のタイトルと同じです。ここで「お?」という意外性や、視覚的な美しさ、ダイナミックな動きなど、何かしらのフックがなければ、中身がどれだけ素晴らしくても見てもらうことすらできないのです。
AIの創造性を引き出すプロンプト:「誰も見たことのない表現」
この冒頭のインパクト作りにおいて、AIは私たちの最強の武器となります。従来であれば、大規模なCG制作や困難な撮影が必要だった表現を、プロンプト一つで生み出せるからです。 重要なのは、AIに単なる場面描写を指示するだけでなく、「演出」を指示することです。例えば、Chatツールで構成案を作成する際に、以下のような「魔法の一言」を加えてみましょう。 「導入部分で、誰も見たことのないような、あっと驚く表現にしてください」 この一言を加えるだけで、AIは「夜のオフィスで男性が働いている」といった平凡な案から、「宇宙から地球へ、そしてオフィスで働く男性の脳内へと高速でズームインしていく」といった、常識を超えたダイナミックな演出を提案してくれます。物理法則を無視したカメラワークや、現実ではありえないシュールな変形など、AIの創造性を引き出すプロンプトを工夫することが、視聴者を釘付けにする映像を生み出す第一歩です。
共感を呼ぶ「問題提起」の重要性
インパクトのある映像で視聴者の注意を引くことに成功したら、次は「これは、私のための動画だ」と思わせる必要があります。そのための技術が「問題提起」による共感の創出です。
「あるある」な悩みで視聴者の心を掴む
人は、自分自身の悩みや課題に最も関心があります。広告がその悩みを的確に言語化してくれると、「そうそう、それで困ってたんだ!」と強い共感を覚え、一気に話を聞く姿勢になります。 例えば、高性能な洗剤の広告を作る際に、「この洗剤は界面活性剤の働きで……」と説明しても、誰も興味を持ちません。しかし、「お気に入りのTシャツにこぼしたカレーのシミ、なかなか落ちなくて諦めていませんか?」と問いかければどうでしょう。多くの人が経験したことのある「あるある」な悩みを提示することで、視聴者は瞬時にその問題を「自分ゴト」として捉えるのです。
「自分に関係ある」と思わせるシナリオの作り方
効果的な問題提起を行うには、まず広告を届けたいターゲットの解像度を極限まで高めることが重要です。「20代女性」といった漠然とした括りではなく、「仕事帰りの電車で、ついSNSを見てしまい、自分と他人を比べて落ち込むことがある20代のOL」というように、具体的な人物像(ペルソナ)を思い描きましょう。 その人物が日常で何に悩み、何にイライラし、何を「もっとこうなれば良いのに」と思っているかを想像するのです。そして、その悩みを具体的かつ、語りかけるような言葉でシナリオに落とし込みます。「〜なこと、ありませんか?」「〜で悩んでいませんか?」といった問いかけの形にすることで、視聴者は自分に話しかけられているように感じ、広告への関与度が一気に高まります。
パート2:訴求 ― 「欲しい」を引き出すベ-ネフィットの伝え方
導入パートで視聴者の心を掴むことに成功したら、次はその関心を具体的な「欲しい」という欲求へと転換させる、広告の核となる「訴求」パートに移ります。ここで伝えるべきは、あなたの商品やサービスが、視聴者の悩みをいかに素晴らしく解決してくれるかという「約束」です。
しかし、単に「この商品が解決します」と提示するだけでは、無数の競合製品がひしめく現代市場では不十分です。このパートの目的は、視聴者に「これは、私の問題を解決してくれるだけでなく、想像以上の未来をもたらしてくれる唯一の選択肢だ」と感じさせることです。
問題解決だけでは響かない
多くの作り手が陥りがちなのが、商品の「機能」ばかりを語ってしまうという間違いです。視聴者が本当に知りたいのは、その機能が自分の生活をどう変えてくれるのか、という「結果」です。ここで重要になるのが、「機能」と「ベネフィット」の違いを明確に理解することです。
- 機能(Feature)とベネフィット(Benefit)の違い
- 機能(Feature): その商品が持つ「特徴」や「スペック」のことです。客観的な事実や性能を指します。(例:「この美容液にはビタミンC誘導体が10%配合されています」)
- ベネフィット(Benefit): その機能によって顧客が得られる「利益」や「嬉しい未来」のことです。顧客の感情や欲求に直接訴えかけます。(例:「この美容液を使えば、気になっていた毛穴が目立たなくなり、自信を持って人と話せるようになります」)
- 視聴者はビタミンC誘導体が欲しいのではなく、毛穴の悩みから解放され、自信に満ちた自分が欲しいのです。広告で語るべきは、後者のベネフィットです。AIで映像を作る際も、商品のスペックを説明する映像ではなく、その商品を使ったことでユーザーがどのような素晴らしい体験をしているか、その「理想の未来」を映像化することを常に意識しましょう。
期待を超える「プラスアルファの魅力」を語る
問題解決を約束し、ベネフィットを提示した上で、さらに視聴者の心を強く動かすのが、「期待を超えるプラスアルファの魅力」、すなわち付加価値の存在です。
競合と差別化する付加価値の見つけ方
あなたの扱う商品には、基本的なベネフィット以外に、どのような独自の価値があるでしょうか? それを見つけるには、「もしこの商品がなかったら、顧客は他にどんな不満や手間を抱えるだろうか?」と考えてみるのが有効です。 例えば洗濯洗剤の場合、基本的なベネフィットは「汚れが落ちる」ことです。しかし、顧客は「部屋干しの嫌な臭い」「アイロンがけの手間」「色落ちの心配」といった別の不満も抱えているかもしれません。これらの「隠れた不満」を解消できる要素こそが、強力な付加価値となります。
「抗菌効果4倍」に学ぶ、具体的なベネフィットの提示方法
例で挙げられた「頑固な汚れも落としきって、さらに抗菌効果も4倍ですよ」というフレーズは、この付加価値の提示方法として非常に優れています。 これは、単に「汚れが落ちる」という基本ベネフィット(問題解決)に加えて、「部屋干しの嫌な臭いからも解放される」という強力なプラスアルファのベネフィットを約束しているからです。特に「4倍」という具体的な数字は、その効果の絶大さを直感的に伝え、競合製品に対する優位性を明確に示します。 あなたの広告でも、このように「〇〇なだけでなく、さらに△△にもなる」という形で、基本ベネフィットと付加価値をセットで提示することで、視聴者の「欲しい」という感情を決定的なものにすることができるのです。
パート3:行動喚起(CTA) ― 視聴者を迷わずゴールへ導く
「導入」で視聴者の注意を引き、「訴求」で「欲しい」という欲求を喚起しました。動画の物語はクライマックスを迎え、視聴者の感情は最高潮に達しています。しかし、ここで満足してはいけません。広告の目的を達成するためには、この高まったエネルギーを具体的な「行動」へと繋げる、決定的な最後の一手が必要です。
それが「行動喚起(CTA:Call to Action)」です。このパートは、視聴者を広告主が望むゴールへと迷わず導くための、極めて重要な最終指示となります。
動画の成果を確定させる最後の一手
どれだけ感動的な動画を作っても、視聴者がその熱量を持て余し、「で、どうすればいいの?」と一瞬でも迷ってしまえば、その熱は急速に冷めてしまいます。CTAは、その迷いを完全に取り払い、動画の成果を確定させるための「ダメ押し」の役割を担います。
なぜCTAがないと広告効果が激減するのか
CTAがない広告は、目的地を告げずに客を乗せるタクシーのようなものです。どれだけ快適なドライブを提供しても、最終的にどこにも辿り着かなければ意味がありません。 人間は、明確な指示がなければ、なかなか行動に移れないものです。「良い商品だな」と感じても、次の瞬間には別の動画や情報に気を取られ、その感情はすぐに忘れ去られてしまいます。広告制作者の「きっと興味があれば自分で調べてくれるだろう」という期待は、ほとんどの場合、叶うことはありません。 導入と訴求で積み上げてきた視聴者の好意や興味を、実際の「クリック」「購入」「検索」といった測定可能な成果へと転換する。そのために、「あなたに次にしてほしいことは、これです」と、手を取ってゴールまで導いてあげるような、親切で明確な指示が不可欠なのです。CTAを省略することは、ゴール前でシュートを打つのをやめてしまうようなものであり、広告の成果をほぼゼロにしてしまうと言っても過言ではありません。
具体的なアクションを促すフレーズと見せ方
効果的なCTAは、シンプルで、分かりやすく、そして行動のハードルが低いことが特徴です。ここでは、ウェブ広告で頻繁に使われる代表的なパターンを紹介します。
「今すぐチェック」「〇〇で検索」などのパターン紹介1. 直接的な誘導パターン
動画広告にクリック可能なリンクやボタンが設置されている場合に最も有効な方法です。
- フレーズ例: 「詳しくはこちら」「今すぐチェック」「無料トライアルを試す」「公式サイトへ」
- 見せ方: 画面上に表示されるボタンを矢印やアニメーションで指し示したり、指でタップするような演出を加えたりすることで、次に行うべき操作を視覚的に分かりやすく伝えます。
検索誘導パターン
クリックできない広告枠や、ブランド名・商品名を覚えてもらうことを目的とする場合に有効です。
- フレーズ例: 「『〇〇(商品名)』で検索」「ウェブで検索」
- 見せ方: スマートフォンやPCの検索窓のグラフィックを表示し、そこにキーワードが自動で入力されていくアニメーションを見せるのが定番です。これにより、視聴者は「検索する」という行動を具体的にイメージできます。
SNS特化パターン
InstagramやTikTokなど、プラットフォーム内の行動を促したい場合に用います。
- フレーズ例: 「プロフィール欄のリンクから」「いいね・保存でいつでも見返せます」「コメントで教えてください」
- 見せ方: 「プロフィール欄へ→」といった矢印のイラストを入れたり、「いいね」や「保存」のアイコンを画面上に表示したりして、エンゲージメントを高めます。
これらのCTAをナレーションやテロップで明確に提示することで、視聴者は迷うことなく次のステップへと進んでくれます。あなたの動画の目的に合わせて、最適なCTAを選択しましょう。
【実践】構成案を「絵コンテプロンプト」に落とし込む3ステップ
ここまでの章で、広告を成功に導くための強力な「設計図」である「3パート構成」を学びました。この最終章では、その設計図を元に、AIを駆使して具体的な映像(絵コンテ)を生み出すための、実践的な3つのステップを解説します。
このワークフローをマスターすれば、頭の中のアイデアを驚くほどスピーディかつ高品質なビジュアルへと変換できるようになります。
Step 1:Chatツールで構成案の骨子をスピーディに作成する
最初のステップは、私たちの「企画パートナー」であるChatツール(ChatGPTなど)に、動画全体の骨子となる構成案を作成させることです。ここで重要なのは、AIに丸投げするのではなく、私たちが「プロデューサー」として的確な指示を与えることです。
役割・目的・ターゲットを明確に指示するプロンプト術
AIから質の高いアウトプットを引き出す秘訣は、インプットの質にあります。AIを優秀なアシスタントだと考え、曖昧さのない明確な「依頼書(プロンプト)」を渡しましょう。最低限、以下の要素を盛り込むことが重要です。
- 役割設定: あなたは優秀なCMプランナーです。 ← AIの思考モードを専門家に設定
- 目的: 目的は商品の購入を促す集客です。 ← 動画のゴールを明確化
- ターゲット: ターゲットは残業が多く疲れやすい20代後半の社会人男性です。 ← 誰に届けたいかを指定
- 商品: 商品は高濃度ビタミンドリンクです。 ← 何を売るのかを定義
- 構成指示: 必ず「導入・訴求・行動喚起」の3パート構成で作成してください。 ← 本稿で学んだ「型」を厳守させる
動画の尺とカット数の目安(30秒8カットの理由)
プロンプトには、「動画の尺は30秒、カット数は8カットでお願いします」といった具体的な仕様も加えましょう。この「30秒8カット」という数字は、単なる目安ではありません。これには2つの実践的な理由があります。
動画生成AIの技術的制約
現在の動画生成AI(Runwayなど)は、一度に生成できる動画の長さに限りがあります(例:4秒程度)。30秒の動画を作るには、複数の短いクリップを繋ぎ合わせる必要があり、8カットという数はその作業効率から見ても理にかなっています。
視聴者を飽きさせないテンポ感
ウェブ広告では、2〜4秒に一度カットが切り替わるスピーディな展開が視聴者の集中力を維持します。8カットという数は、30秒の尺において理想的なテンポ感を生み出すための最適な分割数なのです。
Step 2:プロンプトに「魔法の一言」を追加してインパクトを増幅させる
Step 1で出力された構成案は、論理的でまとまってはいるものの、往々にして「平凡」です。ここからがクリエイターの腕の見せ所。AIの創造性を解放する「魔法の一言」をプロンプトに追加し、構成案を劇的に進化させましょう。
平凡な構成案を劇的に変えるビフォーアフター Before(最初の指示)
映像イメージ:夜のオフィスで、男性が疲れ切った顔でパソコンに向かっている。 魔法の一言を追加: 「導入部分で、誰も見たことのないような、あっと驚く表現にしてください」 After(追加指示後の提案): 映像イメージ:宇宙から地球へ、そして東京のビル群を抜け、男性の脳内へ高速でズームインする。 いかがでしょうか。単なる状況説明だった映像が、一気に視聴者の心を掴むダイナミックな「イベント」へと変貌しました。
AIに「演出家」として仕事をさせるコツ
AIを単なるテキスト生成ツールとしてではなく、優秀な「演出家」として扱いましょう。そのためには、具体的で物理的な指示だけでなく、抽象的で感情的な指示を与えることが有効です。
- 「物理法則を無視したカメラワークで」
- 「夢の中のようなシュールな雰囲気で」
- 「視聴者が息を呑むような、寂しくも美しい情景を描いてください」
- このような指示は、AIに創造的な解釈の余地を与え、私たちが想像もしなかったようなユニークなアイデアを引き出すきっかけとなります。
Step 3:最終版 – 画像生成AIに入れる詳細プロンプトの書き方と実例
Chatツールで練り上げた構成案(テキスト)を、いよいよMidjourneyなどの画像生成AIで「絵」にしていきます。ここでは、抽象的な構成案を、AIが理解できる具体的な「映像言語」に翻訳する作業が必要です。
構図、被写体、背景、雰囲気を言語化するテクニック
一枚の絵を構成する要素を、以下のように分解して言語化します。これをカンマ区切りで繋げていくのが基本です。
- 構図 (Composition): カメラの位置と画角 (クローズアップ, 広角ショット, 俯瞰など)
- 被写体 (Subject): 誰が、何が、どのような状態でいるか (20代の日本人男性、疲れ切った表情)
- 服装 (Clothing): 被写体が何を着ているか (白いシャツ、緩めたネクタイ)
- 背景 (Background): 被写体がいる場所 (近未来的なオフィス、窓の外には東京の夜景)
- 光と色 (Light & Color): 全体の雰囲気やムードを決める光 (デスクライトの強い光と影のコントラスト, 青とオレンジがキーカラー)
- スタイル (Style): 全体の画風 (シネマティック, フォトリアル, 8K)
- 【コピペOK】高濃度ビタミンドリンク広告の詳細プロンプト例 これまでのステップで完成させた「高濃度ビタミンドリンク」の構成案を、画像生成AI用の最終プロンプトにしたものが以下になります。
▼パート1:導入(注意喚起と共感)/ 0-7秒
- カット1 (3秒):【インパクト】
- プロンプト: cinematic, A breathtaking view from space. The camera rapidly zooms towards Earth, then Japan, then a glowing Tokyo at night. The zoom continues at impossible speed, plunging into one building, through the window, and directly into the tired brain of a young Japanese office worker. Neural networks are shown as dimly lit circuits. –ar 16:9
- ナレーション: 「思考の限界。それは、エネルギーの限界だ。」
- カット2 (4秒):【問題提起・自分ゴト化】
- プロンプト: cinematic close-up, the face of a tired Japanese man in his late 20s. His eyes are unfocused, reflecting a blurry computer screen filled with complex data. He sighs, rubbing his temples in frustration. The office around him is dark and lonely. –ar 16:9
- ナレーション: 「そのアイデア、その集中力…まだ出るはずなのに。」
▼パート2:訴求(ベネフィットの提示)/ 8-22秒
- カット3 (4秒):【解決策の登場】
- プロンプト: dramatic shot, The man opens a sleek, minimalist refrigerator. A single bottle of “V-CHARGE” is inside, glowing with a soft, powerful orange light that illuminates his hopeful face. –ar 16:9
- ナレーション: 「脳に、直接エネルギーを。」
- カット4 (5秒):【ベネフィット1:即効性】
- プロンプト: stylish slow-motion, The man drinks “V-CHARGE”. As he does, glowing orange energy lines, like digital circuits, visibly flow up his neck and spread across his brain, lighting up the previously dim neural networks. –ar 16:9
- ナレーション: 「高濃度ビタミンが、思考の速度をブーストする。」
- カット5 (6秒):【ベネフィット2:プラスアルファの魅力】
- プロンプト: dynamic split-screen shot. On the left, the man is now laser-focused, typing rapidly on his keyboard with a confident smile. On the right, a stylized animation shows a shield icon forming around the brain, deflecting stress factors represented by jagged red shapes. –ar 16:9
- ナレーション: 「パフォーマンスを高めるだけじゃない。ストレスからも、守り抜く。」
▼パート3:行動喚起(CTA)/ 23-30秒
- カット6 (3秒):【成功体験】
- プロンプト: cinematic shot, The man stands up, stretching with a satisfied look. The morning light is now streaming into the office. His presentation on the computer screen shows a “PROJECT COMPLETE” message. –ar 16:9
- ナレーション: 「最高の自分で、明日を迎えよう。」
- カット7 (3秒):【商品カット】
- プロンプト: sleek product shot, A bottle of “V-CHARGE” on a clean, dark surface. Water droplets cover the bottle, making it look cool and refreshing. The product logo is sharp and clear. –ar 16:9
- カット8 (2秒):【CTA】
- プロンプト: clean graphic screen, The “V-CHARGE” logo is displayed prominently in the center. Below it, a search bar animates with the words “V-CHARGE 限界突破” being typed out. –ar 16:9
- ナレーション: 「Vチャージで、検索。」
まとめ:構造を制する者が、AI動画制作を制する
ここまで、AI時代の動画広告制作における「企画」の深掘りとして、視聴者の心を動かし、行動を促すための普遍的な「型」である「3パート構成」と、それを具体的なビジュアルに落とし込むためのプロンプト術について解説してきました。
最後に、今回の学びを改めて整理し、次のクリエイティブなステップへと繋げていきましょう。
今回のポイント総括:3パート構成とプロンプト術
本稿で学んだ要点は、大きく分けて3つです。
価値の源泉は「企画力」と「構造の理解」へ
AIが「映像を作ること」そのものをコモディティ化した今、クリエイターの真の価値は、AIを使いこなすための「設計図」を描く能力にシフトしています。その根幹をなすのが、人間心理に基づいた広告の「型」を理解し、応用する力です。
最強のフレームワーク「3パート構成」
短尺ウェブ広告で成果を出すための、シンプルかつ最も強力な設計図が「3パート構成」です。
- 導入: 「インパクトのある映像」で注意を惹きつけ、「共感を呼ぶ問題提起」で自分ゴト化させる。
- 訴求: 商品がもたらす「ベネフィット」と「プラスアルファの魅力」で、「欲しい」という感情を創出する。
- 行動喚起 (CTA): 視聴者に次に取るべき具体的なアクションを明確に示し、広告の成果を確定させる。
AIの能力を最大限に引き出す「プロンプト術」
優れた構成案を具体的な映像にするためには、AIとの戦略的な対話が必要です。
- Step1: Chatツールに「役割・目的・ターゲット」などを明確に伝え、構成の骨子を作らせる。
- Step2: 「誰も見たことのない表現で」といった魔法の一言を加え、AIを「演出家」として機能させ、アイデアを昇華させる。
- Step3: 最終的な構成案を、画像生成AIが理解できる「構図・被写体・雰囲気」といった映像言語に翻訳し、詳細なプロンプトを完成させる。
これらは単なるテクニックの寄せ集めではありません。アイデアの着想から具体的なビジュアル制作の一歩手前までを、一気通貫で、かつ効率的に進めるための体系的なワークフローなのです。
次のステップへ:企画をビジュアルに落とし込む画像生成
第6章で完成させた詳細な絵コンテプロンプトは、あなたのアイデアが詰まった、AI動画制作における最も重要な「設計図」です。そして今、あなたはその設計図を握りしめ、いよいよ制作の現場へと足を踏み入れる準備が整いました。
次のステップは、このプロンプトをMidjourneyやStable Diffusionといった画像生成AIに入力し、頭の中にしかなかったビジュアルを一枚一枚、現実の「絵」として生成していくエキサイティングな工程です。
緻密な設計図があるからこそ、画像生成のプロセスで迷うことはありません。カットごとに、どのような構図で、どのような表情の人物を、どのような雰囲気で描けばよいかが、全て言語化されているからです。
いよいよ、あなたのアイデアに命を吹き込む時です。
本稿で身につけた「構造を設計する力」を武器に、AIと共に、まだ誰も見たことのない映像表現の世界へ挑戦していきましょう。
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