2025年10月19日、大河ドラマ『べらぼう』第40回放送。多くの視聴者が固唾をのんで見守る中、ついに“彼”が登場しました。主人公・蔦屋重三郎(横浜流星)の師・鱗形屋(尾上菊五郎)に連れられて現れた一人の男。
それが、のちの世界的絵師・葛飾北斎こと、勝川春朗(かつかわ しゅんろう)。
そして、その顔は……お笑いコンビ「野性爆弾」のくっきー!さんでした。
放送直後から、SNSでは「ヤバすぎw」「怪人すぎる」「あ、変人だ」「でも、これこそが北斎かも」と賛否両論(しかし多くは“賛”)の渦が巻き起こりました。
大河ドラマ初出演にして、日本が誇る天才絵師という大役。なぜ、この衝撃的なキャスティングが実現したのでしょうか。
北斎は「偉人」か「変人」か? 93回引っ越した男の素顔
私たちが知る葛飾北斎は、『富嶽三十六景』や『北斎漫画』を描いた「偉人」です。しかし、彼の同時代人から見た評価は、少し違いました。
- 自称「画狂人」: 文字通り、絵に狂った人と自ら名乗りました。
- 改名の鬼: 生涯で「北斎」「為一」「卍」など30回も名前を変えています(春朗もその一つ)。
- 引っ越し魔: 部屋が絵で汚れて散らかり放題になると、掃除せず、即引っ越し。その数、生涯で93回。
- 奇行の数々: 巨大な紙に達磨を描くパフォーマンスを見せたかと思えば、米粒に雀を描く超細密画もこなす。まさに常識外れのアーティストでした。
彼は、既存の流派(勝川派)に収まりきらず、あらゆる画法を貪欲に吸収し、独自のスタイルを確立した「画壇の革命児」。その本質は、上品な芸術家ではなく、エネルギーの塊のような「パンクな変人」だったのです。
なぜ今、くっきー!が北斎だったのか?
ここで、最初の疑問に戻ります。「なぜ、くっきー!さんが北斎(春朗)役に?」
分析すると、制作陣の明確な意図が見えてきます。
理由1:「画狂人」と「パンク」の魂が共鳴した
『べらぼう』の制作統括によると、脚本の森下佳子さんらと春朗役を議論した際、「真っ先に名前が出てきたのがくっきー!さんだった」といいます。
くっきー!さん自身、独特の世界観を持つアーティストとして国内外で個展を開き、高い評価を得ています。彼の芸風やアートは、常識的な「お笑い」の枠にも「アート」の枠にも収まりません。
制作陣は、この「常識の枠を破壊するパンクな魂」こそが、北斎の本質だと見抜きました。教科書的な「偉人」ではなく、エネルギッシュで破天荒な「画狂人」を描く上で、くっきー!さん以上の適役はいなかったのです。
くっきー!さん本人も、この大役に「光栄中の鬼光栄で御座います」とコメントしています。
理由2:『べらぼう』が描く「江戸のポップカルチャー」
『べらぼう』は、蔦屋重三郎というプロデューサーが、いかにして喜多川歌麿(染谷将太)、山東京伝(古川雄大)、そして葛飾北斎(くっきー!)といった「才能の原石」を見出し、世に送り出したか、という物語です。
これは、現代で言えば「芸能事務所の社長が、パンクなアーティストやアイドルをプロデュースする」物語に他なりません。
第40話では、くっきー!さん演じる春朗と同時に、津田健次郎さん演じる曲亭馬琴(滝沢瑣吉)、井上芳雄さん演じる十返舎一九(重田貞一)といった「後の天才たち」が続々と登場しました。
彼らが互いにぶつかり合い、蔦重のもとで才能を開花させていく「江戸のポップカルチャー黎明期」の熱量を、くっきー!さんの持つ強烈な個性が体現しているのです。
【影響】私たちの「偉人」観をアップデートする
このキャスティングが私たちに与える影響は、単なる「サプライズ」に留まりません。
これまで、大河ドラマで描かれる歴史上の「偉人」は、どこか品行方正で立派な人物像が主流でした。しかし、『べらぼう』は、「天才とは、常識外れの変人でもある」という事実を、くっきー!さんの起用によって鮮烈に突きつけてきました。
『べらぼう』第40話で、春朗(くっきー!)は、馬琴(津田健次郎)の作品を「屁以下」とこき下ろし、取っ組み合いの喧嘩になります。
私たちは、このドラマを通じて、「天才」や「偉人」を単に崇拝するのではなく、そのアンバランスな人間性や狂気も含めて愛おしむ、新しい歴史の楽しみ方を知ることになるでしょう。
【まとめ】明日からどう見る? あなたのための提案
今回の「クッキー!北斎」の衝撃は、「天才=変人」というシンプルな真実を、私たちに再認識させてくれました。
この記事を読んだあなたへ、2つの提案です。
行動提案(今すぐできること):
まだ『べらぼう』の第40回を見ていない方は、ぜひ再放送やNHKオンデマンドで、くっきー!さん演じる春朗の「奇行」と、その中に光る「画狂」の片鱗をご自身の目で確かめてみてください。その上で、柳楽優弥さんが演じた映画『HOKUSAI』など、他の作品と見比べるのも一興です。思考提案(明日、話すネタ):
職場の同僚や友人に、こう問いかけてみましょう。
「『べらぼう』のクッキー北斎、どう思った? もし他の天才(例えば歌麿とか馬琴)を芸人が演じるとしたら、誰が合うと思う?」
この議論は、「その人物の本質は何か?」を考える、非常に知的なゲームになるはずです。
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【よくある質問(FAQ)】
Q1: くっきー!さんは『べらぼう』で何の役ですか?
A1: のちに『富嶽三十六景』を描く世界的浮世絵師・葛飾北斎の若き日の姿、勝川春朗(かつかわ しゅんろう)役を演じています。2025年10月19日放送の第40回で初登場しました。
Q2: なぜ、くっきー!さんが北斎役に選ばれたのですか?
A2: 自らを「画狂人」と称し、生涯で93回引っ越すなど、常識外れの「変人」だった北斎。その「パンク」で破天荒な本質が、くっきー!さんの持つアーティスト性や芸風と見事に一致したためです。制作陣が「真っ先に名前が挙がった」と語るほどのハマり役です。
Q3: くっきー!さんは大河ドラマ初出演ですか?
A3: はい。今回(2025年『べらぼう』)が、大河ドラマ初出演となります。その衝撃的なデビューがSNSなどで大きな話題となりました。
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