こんにちは、にこいちです。
数年前、出張帰りの新幹線に、あろうことかPCの入ったカバンを丸ごと忘れた時の、あの血の気が引く感覚…。今でも忘れられません。
結局、その時は終着駅まで行ったカバンが数日後に見つかりましたが、あの「どこに電話すればいいんだ?」「繋がらない…」「特徴をどう説明すれば…」という絶望的な数時間を、皆さんも一度は経験したことがあるかもしれません。
私たちは「落とし物は見つかればラッキー」という常識の中で生きてきました。しかし今、その常識が根底から覆されようとしています 。
今回の主役は、落とし物クラウドサービス「find(ファインド)」 。
なぜ京王電鉄で発見率がわずか8%から32%へと劇的に向上したのか?なぜ競合だったはずのJR東日本が、自社開発を横に置いてまで導入を決めたのか?
私なりの「核心」分析を加えて、findが単なる便利ツールではなく、社会インフラそのものになろうとしている理由を、徹底的に解き明かします。
なぜ「8分」が「2分」に? 業務の”非同期化”という革命

まず、findが何を変えたのか。原案にある京王電鉄の比較表が全てを物語っています 。
従来は、1日500件の電話 が鳴り響き、スタッフは「黒い傘」「青いポーチ」といった曖昧なテキスト情報 を頼りに、1件8分かけて手作業で探していました 。
findは、この構造を3つのテクノロジーで破壊します。
- 【登録】駅員は「スマホで撮影」するだけ 。AIが「黒」「財布」「革」といった特徴を自動入力します 。
- 【問合せ】利用者は「LINE」で24時間問い合わせできる 。
- 【照合】「AI」が画像と問い合わせ内容を自動で照合する 。
テキストでは判別不能な「白いイヤホン」も、シリアルナンバーの写真一枚で本人特定が完了する。
結果、対応時間は2分に短縮(75%削減)され、発見率は4倍の32%に跳ね上がりました 。
しかし、私が「これは革命だ」と唸ったのは、単なる効率化ではありません。
これは、「同期的(電話)」だった業務を、「非同期的(チャット)」に移行させたことなんです。
電話は、鳴った瞬間に「1対1」でスタッフの時間を奪います 。しかしチャットなら、スタッフは自分の業務が一段落した時に、まとめて複数件を処理できる 。この「問い合わせ」と「応答」の分離こそが、現場の負担を8割削減 し、応答率を90%超に改善する魔法の正体です。
findが「業界インフラ」になる2つの戦略
さて、業務効率化だけなら「優れたSaaS」です。しかし、findが「インフラ」と呼ばれる理由は、その先にある2つの戦略にあります。
1. 「横断検索」というネットワーク効果
原案で「核心」として挙げられていたJR東日本の導入 。これは巨大なターニングポイントです。
「新宿で忘れた。JR?京王線?それとも百貨店?」
これが利用者の本音です。利用者は「どの会社で」落としたかなど覚えていません 。
従来は、JR、京王、百貨店の全てに”個別に”電話する必要がありました 。
findの「横断検索」機能 は、findを導入する全企業のデータベースを接続します 。利用者は一度検索するだけで、JRも京王も、近隣の商業施設も同時に探せるようになる 。
JR東日本が自社開発(競合) だったにも関わらずfindを選んだのは、この「プラットフォーム」としての将来性 に他なりません。
これは強力な「ネットワークの堀」です 。
後から来た競合がAIチャット機能を真似できても、JR東日本やJR九州 と繋がったこの「検索ネットワーク」 をコピーすることはできません。
2. 「findリユース」という錬金術

そして、ここが私が最も衝撃を受けた「第二の核心」です。
原案のFAQ にひっそりと書かれていますが、これこそがfindの真の恐ろしさ(褒め言葉)です。
落とし物は、3ヶ月経つと所有権が施設に移ります 。
従来、これらは100%「負債」でした。保管コストがかさみ、最後は産業廃棄物として「廃棄コスト」を支払って処分していたのです 。ある百貨店では、これが月10万円の支出だったとか 。
「findリユース」 は、この常識を反転させます。
- findが、所有権の切れた落とし物を「ゼロ負担」で回収。
- 検品や鑑定を行い、メルカリShopsで販売。
- 得られた収益を、施設とシェアする(または買い取る)。
月10万円の「コスト」を払っていた百貨店が、逆に月2万円の「収益」を得るようになった 。
これは、廃棄物を利益に変える「ブルー・オーシャン戦略」 であり、現代の「錬金術」です。
導入企業にとって、findは「業務効率化(コスト削減)」と「リユース(収益創出)」 という、2つの利益を同時にもたらす、辞める理由のないサービスになります。
3つのシナリオと、その先の「データインフラ」
- 楽観シナリオ: 回収・保管まで代行する「findセンター」 が成功し、リユースも黒字化 。名実ともに社会インフラへ。
- 悲観シナリオ: SaaS事業は残るが、物流(センター)やリユース事業 がコスト倒れし、インフラ化は限定的に。
- 現実シナリオ: SaaSを基盤に、センター事業(BPO) が確立。リユースはCSR としてブランド価値を高め、「総合カンパニー」へ進化 。
私は「現実シナリオ」 が最もあり得ると考えます。
しかし、私が考えるfindの最終形態は、そのさらに先、「データインフラ」です。
findには、「何が」「どこで」「いつ」失われるかという、比類なきビッグデータ が蓄積していきます。
「雨の金曜の夜、○○駅の3番線ホームでは傘の紛失が30%増加する」
「御社の新型イヤホンは、他社製品より2倍多く紛失登録されている(=ケースの設計に問題があるかもしれない)」
この予測分析や製品改善インサイト は、鉄道会社、メーカー、都市計画にまで活用できる、まさに「宝の山」でしょう。
明日から、あなたの「思考」もDXしよう
この「find」の事例、他人事ではありません。
原案の「提案」は、私たち全員が持つべき視点です。
もし落とし物をしたら、「また電話か…」と諦める前に、まず施設のHPを見てください 。そこに「LINE検索」や「find」の案内 がないか? デジタルの窓口が、あなたの絶望を希望に変える最短ルートかもしれません。
そして、あなたの職場で「”find”される前”」のような、非効率な「電話対応」や「手作業」 が残っていませんか?
「find」の事例は、「どうせ無理」と諦めていたアナログな課題を、テクノロジーと「ビジネスモデルの転換」で解決した最高のお手本です。
あなたの仕事の「当たり前」を、今日から見直してみませんか?
よくある質問(FAQ)
Q1. findはどうしてそんなに発見率が高いのですか?
A1. 従来の「テキスト(文字)」検索ではなく、「画像」で登録し、落とし主は「LINE」で問い合わせ、それを「AI」が自動で照合するからです 。曖昧な言葉に頼らず、見た目やシリアルナンバーで正確に特定できるため、発見率が劇的に向上しました 。
Q2. 私たち利用者(落とし主)がfindを使うのにお金はかかりますか?
A2. いいえ。落とし主がLINEなどで問い合わせる際に費用はかかりません 。findは、鉄道会社や商業施設が導入し、月額利用料を支払う「サブスクリプション」モデル(SaaS)です 。
Q3. 誰も取りに来なかった落とし物(満期遺失物)はどうなるのですか?
A3. 従来は、多くがコストをかけて「廃棄」されていました 。findは「findリユース」というサービスで、これらを引き取り、メルカリなどで販売しています 。収益の一部は施設側に還元され、廃棄ロスの削減(SDGs)にも貢献しています 。

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