「最近、マウスを握る指先がなんとなく重だるい…」
「キーボードを打っていると、小指のあたりがビリビリしてくる」
そして、ふと頭をよぎるのが「もしかして、脳梗塞の前兆?」という恐怖。
ネットで検索しては、「脳腫瘍」や「糖尿病」なんて言葉を見つけて、余計に不安になっていませんか?
正直に言います。その不安、痛いほど分かります。
でも、少しだけ落ち着いて聞いてください。
私は現役の理学療法士として、毎日多くの患者さんを見ていますが、「手のしびれ=脳の病気」であるケースは、実はそこまで多くありません。
もっと身近で、もっと物理的な「ある場所」が原因であることがほとんどなんです。
驚かないでくださいね。
実は、毎日デスクワークでPCに向かうあなたと、週末に白球を追いかける野球少年。
この2人の指がしびれる原因は、全く同じなんです。
この記事では、難しい医学書の話は一切しません。
現場のプロとして、あなたが一番知りたい「危険なサインの見極め方」と、今日からできる「たった一つの解決策」をお伝えします。
読み終わる頃には、「なんだ、そうだったのか!」と肩の荷が下りているはずですよ。
そもそも「末梢神経(まっしょうしんけい)」ってなに?(30秒で解説)
本題に入る前に、30秒だけ「体の仕組み」をイメージしてください。
人間の体を「家」に例えると分かりやすいです。
- 脳 = 発電所
- 脊髄(背骨の中) = 電柱
- 末梢神経 = 各部屋(手足)に伸びる「電気コード」
脳から出た命令(電気)は、この「コード」を通って指先に届きます。
逆に、指先で感じた感覚も、このコードを通って脳に戻ります。
では、「しびれ」とは何か?
それは、電気コードがどこかで「踏んづけられている」状態です。
ホースを踏むと水が止まりますよね?
それと同じで、神経というコードが筋肉や骨に圧迫されると、電気がうまく流れずに「ビリビリ」「ジンジン」というノイズが走るのです。
問題は、「一体どこでコードが踏まれているのか?」です。
次でその犯人を明かします。
なぜ?デスクワークと野球少年の「しびれ原因」が同じ理由
「おじさんと子供、全然違うじゃないか!」と思いますよね。
でも、理学療法士の視点で見ると、両者の「姿勢」は驚くほど似ています。
共通の犯人。それは…
「サビついた肩甲骨」と「巻き肩」による、鎖骨下の渋滞です。
どちらも「胸の前」が詰まっている
神経(電気コード)は、首から出て、鎖骨の下(胸の筋肉の奥)を通って腕に向かいます。ここが一番の「難所」です。
- デスクワークの大人:
1日8時間以上、キーボードに向かって「胸を閉じる」姿勢を続けています。肩が前に巻き込まれ、肩甲骨が外に開いたまま固まって(サビついて)います。 - 野球少年:
投球やバッティングで、「胸の前の筋肉(大胸筋・小胸筋)」を酷使しています。成長期で骨は伸びるのに、筋肉の柔軟性が追いつかず、パンパンに張っています。
「動かさなすぎ(大人)」と「使いすぎ(子供)」。
入り口は違いますが、結果として起きていることは同じ。
👉 鎖骨と肋骨の間が狭くなり、神経の通り道が「渋滞」を起こしているのです。
これが、年齢に関係なく起きるしびれの正体、専門用語でいう「胸郭出口症候群(きょうかくでぐちしょうこうぐん)」の予備軍です。
【PT直伝】病院へ行くべき?「危険なしびれ」と「安全なしびれ」
「でも、本当に脳の病気じゃないの?」
まだ不安ですよね。ここで、私が診察室で「あ、これは緊急性はないな(筋肉の問題だな)」と判断するポイントを教えます。
✅ 安心材料(様子見・セルフケアOK)
以下の特徴があるなら、原因は「姿勢」や「筋肉」である可能性が高いです。
- 首や肩の角度で、しびれが変わる(首を傾けるとビリっとくる、など)
- 姿勢を正すと少し楽になる(胸を張るとマシになる)
- 日によって強さが違う
- 左右どちらかだけに出る
これらは「動きによってコードの圧迫具合が変わっている」証拠です。つまり、姿勢さえ直せば治る見込みがあります。
🚨 要注意(すぐに病院へ!)
逆に、以下の場合は迷わず脳神経外科や整形外科を受診してください。
- どんな姿勢をしていても、24時間ずっとしびれている
- 日に日に感覚がなくなっていく
- ろれつが回らない、箸やコップを落とす(力が入らない)
- 顔や足まで一緒にしびれる
この「線引き」を知っておくだけで、無駄な不安は消えるはずです。
もしあなたの症状が「安心材料」に当てはまるなら…おめでとうございます。それは、自分で治せます。
今日からできる!たった1つの「壁ピタ」セルフチェック&ケア
「じゃあ、何をすればいいの?」
ネットにはいろんなストレッチが載っていますが、あれもこれもやる必要はありません。
これだけやってください。
私が患者さんに必ずやってもらう「壁胸郭(きょうかく)オープンテスト」です。これがそのまま、最強のストレッチになります。
やり方(所要時間:30秒)
- 壁を背にして立ちます。
- 「かかと」「お尻」「背中」「後頭部」をすべて壁にピタッとつけます。
- 両腕を開いて、肘を90度に曲げ、壁につけます(「降参」のポーズ)。
- そのまま、ゆっくり深呼吸を3回。
判定チェック
- 😱 肘や手の甲が壁につかない
- 😱 胸の前が強烈に突っ張る
- 😱 指先がしびれてくる
もしこれに当てはまったら…
犯人は間違いなく「胸〜肩の前側の硬さ」です。
これがそのまま治療になる
この「壁ピタ」ポーズ、最初はキツイですが、深呼吸をしながら毎日30秒続けるだけで、詰まっていた神経の通り道がスーッと広がります。
特別な道具も、場所もいりません。トイレ休憩の壁でOKです。
【実話】「もう投げられない」と泣いた少年が、2週間で復活した話
最後に、私の忘れられないエピソードをお話しします。
ある日、小学生の野球少年が、お母さんと一緒にリハビリに来ました。
「ボールを投げると腕がしびれて力が入らない。もうピッチャーは無理かも…」
彼は診察室で泣いていました。整形外科でレントゲンを撮っても「骨には異常なし」。原因がわからず、途方に暮れていたのです。
私は彼の体を見て、すぐにピンときました。
極度の巻き肩で、鎖骨の下がパンパンに張っていたからです。
そこで、さきほどの「壁ピタ」をやってもらいました。案の定、肘は壁から10cm以上浮いていました。
私は、彼の腕には一切触れず、硬くなった胸の筋肉(小胸筋)をほぐし、肩甲骨を正しい位置に戻す施術を行いました。
すると…
「あれ?腕がしびれない!」
その場でシャドーピッチングをした彼の目が、驚きで見開かれました。
その後、自宅で「壁ピタ」を続けてもらい、わずか2週間後。彼は全力投球でマウンドに復帰しました。
彼が言った一言が印象的でした。
「腕が悪いんじゃなくて、胸が原因だったんだ…」
これは、野球少年だけの話ではありません。
デスクワークで悩むあなたにも、全く同じ奇跡が起こり得ます。
まとめ:しびれは体からの「動かして!」というサイン
指先のしびれは、あなたの体が発している「SOS」です。 でもそれは、「病気だから怖い!」という警告ではなく、「ちょっと胸が縮こまってるから、広げてくれない?」という、体からの愛おしいリクエストなんです。
【今日からのお願い】
- しびれを感じたら、まずは「壁ピタ」チェック。
- 仕事の合間に、30秒だけ胸を開いて深呼吸。
たったこれだけで、あなたの仕事のパフォーマンスも、お子さんの選手生命も守ることができます。
さあ、今すぐ近くの壁を探して、背中をつけてみてください。
その「気持ちいい」感覚が、回復への第一歩です。

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