「正直、もう限界かもしれない……」
そんなため息が、日本中のスタッフルームから聞こえてきそうです。
2025年1月、衝撃的なニュースが飛び込んできました。2024年の介護事業者の「休廃業・解散」が653件となり、過去最多を更新したというのです。
特にその数字を押し上げているのが、在宅ケアの要である「訪問介護」。
これを見て、「経営努力が足りないからだ」なんてしたり顔で言う人がいたら、私はその人の口を塞ぎに行きますよ。ふざけるな、と。
私の妻もICU(集中治療室)で働く現役の医療従事者です。毎日毎日、極限の状態で命と向き合い、帰宅しては「なんでこんなにキツイのに、報われないんだろう……」と悲鳴を上げています。
今の日本は、エッセンシャルワーカーの「善意」と「自己犠牲」に甘えすぎています。
この記事は、ただのニュース解説ではありません。この理不尽な「介護大倒産時代」を、あなたの事業所がどうやって生き残るか。その「生存戦略」について、綺麗事抜きで語ります。
真犯人は誰だ? インフレ時代に逆行する「報酬改定」の罪
なぜ、需要が増え続けているはずの「訪問介護」がバタバタと倒れていくのか?
ニュースでは「人手不足」や「物価高」が原因だと書かれています。もちろんそれもあります。ですが、現場を知る人間からすれば、真犯人は明確です。
2024年の介護報酬改定による「基本報酬の引き下げ」です。
冷静に考えてみてください。世の中はインフレです。電気代もガソリン代も上がり、スーパーの卵の値段さえ上がっている。他業界では「賃上げ」が叫ばれています。
なのに、国は介護事業所の売上のベースとなる「基本報酬」を下げました。
「大元(報酬)のお腹が減っているのに、スタッフには腹いっぱい飯(給与)を食わせてやれ」
国はそう言っているようなものです。これ、経営として成り立ちますか?
構造的に「詰んでいる」状態なんです。真面目にやればやるほど、赤字が膨らむ。まさにボディブローのように効いてきて、2025年についに倒れる事業所が急増した。これが「過去最多」の正体です。
「スーパーマン経営」の幻想を捨てろ
倒産する事業所には、ある共通点があります。それは、社長や管理者が「いい人すぎる」ことです。
- 「現場が回らないから、私がシフトに入ろう」
- 「利用者さんが困っているから、採算度外視で対応しよう」
- 「事務員さんに負担はかけられないから、請求業務も私がやろう」
わかります。痛いほどわかります。
でも、はっきり言います。その「優しさ」が、会社を殺します。
現場に目を配り、人間関係を調整し、さらに経営の数字も見る……そんなことができる「スーパーマン」なんて、この世にはほとんどいません。
多くの現場では、少人数の事務員さんが(あるいは兼務の管理者が)、日々の請求業務や、複雑怪奇な加算・減算のパズル、家族との調整書類に追われています。
「経理や経営戦略に割く時間」なんて、物理的に1分もないのが現実でしょう?
「地域貢献」という言葉に酔って、キャッシュフロー(お金の流れ)から目を背けないでください。
あなたが倒れたら、地域貢献どころか、利用者さんもスタッフも全員路頭に迷うんです。
生き残る1%になるための「泥臭い」生存戦略
では、どうすればいいのか?
国に文句を言っても、明日の売上は増えません。この無理ゲーを攻略するために、今日からマインドを変えてください。
生き残るためのキーワードは2つ。「執念の加算取得」と「DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。
1. 加算は「金儲け」ではない。「スタッフを守る盾」だ
「加算を取るのは手続きが面倒だし、利用者さんの負担も増えるから……」と躊躇していませんか?
その遠慮は捨ててください。
特定事業所加算、処遇改善加算。取れるものはすべて、ガツガツ取りに行く執念が必要です。
これは会社の利益のためではありません。国が決めた理不尽なルールの中で、スタッフの給与を1円でも上げるための唯一の手段だからです。
加算を取りこぼすことは、スタッフの生活を守ることを放棄するのと同じです。
2. DXは「サボり」ではない。「時間」を買う投資だ
「うちは小さいからITなんて……」
逆です。人がいない小さい事業所こそ、DXが必要なんです。
請求業務、シフト作成、記録入力。これらをまだ手書きやエクセルでやっていませんか?
そんな事務作業に追われているから、「加算について調べる時間」も「経営を考える時間」も取れないんです。
今は、DX推進に関する加算も視野に入れるべき時代です。
「人間がやるべき温かいケア」と「機械がやるべき冷徹な計算」を分けてください。機械に任せられる仕事を人間がやっているうちは、この荒波は乗り越えられません。
最後に:生き残った者だけが、正義を語れる
厳しいことを言いましたが、私もあなたと同じ、現場を愛する人間です。
だからこそ、あなたに潰れてほしくない。
「現場は限界だ」「国が悪い」
そう嘆くのは簡単です。私の妻もそう言って帰ってきます。でも、経営者であるあなただけは、そこで思考停止してはいけません。
感情論では、スタッフに飯は食わせられないからです。
まずは今日、自社の状況を見直してください。
取りこぼしている加算はありませんか? 事務作業を減らすツールを検討しましたか?
「いい人」を卒業して、「したたかな経営者」になりましょう。
そうして生き残った事業所だけが、これからの超高齢社会で本当の意味での「地域貢献」を続けられるのですから。と私は強く信じています。

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