【G検定対策】AIが初めて“言葉”を理解した?伝説のプログラム「SHRDLU」とは?Siriの祖先を徹底解説!
「OK Google、今日の天気は?」「Alexa、音楽をかけて!」
今や当たり前になったAIアシスタントとの会話。でも、コンピューターはどうやって私たちの言葉を理解しているのでしょうか? その驚くべき技術のルーツを探ると、約50年も前に開発された、ある伝説的なプログラムに行き着きます。
その名も「SHRDLU(シュルドル)」。
このSHRDLU、実はG検定のシラバスでも「探索・推論技術の代表例」として扱われる、AIの歴史を語る上で欠かせない存在なんです。
この記事では、
- AI初学者にも分かりやすくSHRDLUが何をしたプログラムなのか
- 当時の常識から見て何がそんなにすごかったのか
- 現代のAI技術、特に自然言語処理や対話型AIにどう繋がっているのか
- G検定で抑えておくべきポイント
などを、図や具体例を交えながら、できるだけ柔らかく解説していきます。AIの歴史の面白さ、そして現代技術への繋がりを感じていただけたら嬉しいです!
SHRDLUって何? – 積み木と“対話”したコンピューター
SHRDLUは、1968年から1970年にかけて、テリー・ウィノグラードという研究者によって開発された、自然言語処理プログラムです。
このプログラムがユニークだったのは、「ブロックワールド」と呼ばれる仮想空間が舞台だったこと。コンピューター画面の中には、色とりどりの立方体や四角錐などの積み木があり、SHRDLUは私たち人間と英語で対話しながら、これらの積み木を操作することができたのです。
【ブロックワールドのイメージ】
+——-+ +——-+
| | | |
| 緑の | | 赤い |
| 四角錐 | | ブロック |
| | | |
+——-+ +——-+
テーブルの上 –> ↑ この赤いブロックを…
+——-+
| |
| 青い |
| ブロック |
| |
+——-+ <– この上に置く
(※上記はテキストでの表現ですが、実際には画面上で積み木が動くイメージです)
ユーザーがキーボードで英語の指示を入力すると、SHRDLUはその意味を理解し、仮想空間内のロボットアーム(のようなもの)を操作して、指示通りに積み木を動かしました。
【具体的な対話例】
ユーザー: Pick up the red block. (赤いブロックを持ち上げて。)
SHRDLU: OK.
ユーザー: Put it on the blue block. (それを青いブロックの上に置いて。)
SHRDLU: OK.
注目すべきは、2回目の指示にある「it(それ)」です。私たち人間なら、「それ」が直前に持ち上げた「赤いブロック」のことだとすぐに分かりますよね? SHRDLUは、まさにこの文脈を理解して、「それ」が何を指すのかを判断し、正しく実行できたのです! これは、当時のAIとしては非常に画期的なことでした。
SHRDLUは何がすごかったの? – 当時のAIの常識を打ち破る!
SHRDLUが登場する前にも、「ELIZA(イライザ)」のような簡単な対話プログラムは存在しました。しかし、ELIZAはあらかじめ用意されたパターンに合う言葉を繰り返したり、言い換えたりするだけで、言葉の「意味」や「文脈」を理解していたわけではありませんでした。
一方、SHRDLUは以下の点で、当時のAI技術を大きく前進させました。
- 高度な自然言語理解:
- 単語の意味だけでなく、文の構造(構文解析)や文脈(意味解析)まで考慮して、指示の内容を深く理解しようとしました。
- 「それ」「あれ」といった代名詞が何を指すのか、対話の流れから判断できました。(文脈理解)
- 「青いブロックの上にある赤いブロック」のような、複雑な指示も理解できました。
- 世界の知識(知識表現):
- ブロックワールド内の積み木の色、形、大きさ、そして「何が何の上にあるか」といった位置関係を、コンピューター内部にデータ(モデル)として持っていました。(知識表現)
- この「世界の知識」があったからこそ、「テーブルの上に直接、緑の四角錐は置けない(不安定だから)」といった物理的な制約も理解し、指示が実行可能か判断できたのです。
- 推論と計画(プランニング):
- 「一番大きなブロックを箱に入れて」のような指示に対し、もしそのブロックの上に別のブロックが乗っていたら、「まず上のブロックをどかす」という中間目標を自分で考え出し、実行計画を立てることができました。(推論とプランニング)
- この考え方は、後のロボット工学で重要な「STRIPS」というプランニングアルゴリズムにも影響を与えました。
つまりSHRDLUは、単に言葉を処理するだけでなく、「世界の知識」を持ち、「文脈」を理解し、「推論」して行動できる、非常に統合的なAIシステムだったのです。
SHRDLUの限界と、それでも残した大きな足跡
もちろん、SHRDLUは完璧ではありませんでした。
- 活躍の場は「ブロックワールド」限定: 現実世界のように、曖昧さや予期せぬことが起こる複雑な状況には対応できませんでした。
- 理解できる語彙や文法は限られていた: 人間のような自由な会話はできませんでした。
しかし、これらの限界も含めて、SHRDLUはAI研究に大きな問いを投げかけました。
- コンピューターが本当に「意味」を理解するには何が必要か?
- 知識をどうやってコンピューターに教えればいいのか?
- 推論や計画をどうやって自動化するか?
SHRDLUの挑戦があったからこそ、これらの課題に対する研究が大きく進んだのです。
SHRDLUから現代AIへ – 私たちの身近な技術への繋がり
SHRDLUが示した「自然言語を理解し、知識に基づいて推論し、対話する」という考え方は、50年以上の時を経て、現代のAI技術に脈々と受け継がれています。
- 自然言語処理(NLP): Google翻訳や文章要約、チャットボットなど、私たちの周りにある様々なNLP技術の基礎には、SHRDLUが試みたような構文解析や意味解析、文脈理解の考え方が活かされています。
- 対話型AI: Siri、Alexa、GoogleアシスタントといったAIアシスタントは、まさにSHRDLUの進化形と言えるでしょう。より膨大な知識、より高度な文脈理解、そして音声認識・合成技術などが加わり、私たちの問いかけに応え、タスクを実行してくれます。
- 知識表現と推論: AIが特定の分野で専門家のように振る舞うためには、その分野の知識をコンピューターが扱える形で表現し(知識グラフなど)、それに基づいて推論する技術が不可欠です。SHRDLUは、その重要性を早期に示した実験例でした。
- ロボット工学: ロボットが自律的に判断し、作業計画を立てるためのプランニング技術(STRIPSなど)にも、SHRDLUの考え方が影響を与えています。
SHRDLUは、単なる過去の遺物ではなく、現在の最先端AI技術の「ご先祖様」のような存在なのです。
【G検定対策】SHRDLUの重要ポイントまとめ
G検定対策として、SHRDLUについて特に押さえておきたいポイントをまとめました。
- 開発者・時期: テリー・ウィノグラードが1968年~1970年に開発。
- 位置づけ: 第1次AIブームにおける探索・推論技術の代表例。自然言語処理プログラム。
- 舞台: ブロックワールドという仮想空間。
- 最大の特徴:
- 自然言語(英語)で指示を理解し、積み木を操作。
- 文脈理解が可能(例:「それ」が何を指すか分かる)。
- 知識表現(積み木の色・形・位置関係など)を持つ。
- 推論に基づき、目標達成のためのプランニング(行動計画)が可能。
- 比較対象:
- ELIZA: パターンマッチング中心で文脈理解はできない。SHRDLUはより高度。
- STRIPS: SHRDLUと同様に前提条件・行動・結果でプランニングを行う。SHRDLUが影響を与えた。
- 限界: 仮想世界限定であり、現実世界の複雑性には対応できない。
- 現代への影響: 自然言語処理(NLP)、対話型AI(Siriなど)の基礎・原型となった。
これらのキーワードを中心に、SHRDLUが「言葉を理解し、考えて行動する」AIの先駆けであったことを理解しておきましょう!
まとめ
今回は、AIの歴史における伝説的なプログラム「SHRDLU」について解説しました。
コンピューターが初めて「言葉の意味」を理解しようと挑戦したSHRDLU。その試みは、半世紀以上経った今でも、私たちの生活を便利にするAI技術の中に息づいています。
AIの進化は目覚ましいですが、その原点を知ることで、現在の技術への理解がより一層深まるのではないでしょうか? G検定の学習はもちろん、AIという分野そのものに興味を持つきっかけになれば幸いです。
SHRDLUについて、皆さんはどう思いましたか? よろしければ、ぜひコメントで感想を聞かせてくださいね!
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